人材開発支援助成金は、従業員に業務に関連する研修や職業訓練を実施した会社に対して、研修費用と訓練期間中の賃金の一部が支給される制度です。厚生労働省が実施しており、令和8年度(2026年度)は7つのコースで構成されています。
研修費用の45%から75%が助成されるため、人材育成のコストを大きく下げられます。「社員教育に投資したいが費用が重い」という会社にとって、最初に検討したい制度です。
助成率の高い2コースは令和8年度末で終了する時限措置です。「事業展開等リスキリング支援コース」と「人への投資促進コース」は、現時点では令和8年度限りとされています。最大75%の助成を使うなら、年度内に計画届を提出し訓練を実施できるかがカギになります。
7つのコースの全体像
| コース名 | 主な対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| 人材育成支援コース | 職務に関連する研修全般 | 最も汎用性が高い。10時間以上のOFF-JTが対象 |
| 教育訓練休暇等付与コース | 有給の教育訓練休暇制度の導入 | 制度を導入・運用すれば定額30万円 |
| 人への投資促進コース | デジタル人材育成、定額制研修など | 令和8年度末までの時限措置 |
| 事業展開等リスキリング支援コース | 新分野展開・DXに向けた訓練 | 助成率が最も高い。令和8年度末までの時限措置 |
| 建設労働者認定訓練コース | 建設業の認定職業訓練 | 建設業限定 |
| 建設労働者技能実習コース | 建設業の技能向上訓練 | 建設業限定。足場や玉掛けなどの技能講習も対象 |
| 障害者職業能力開発コース | 障害のある方への職業訓練 | 訓練施設の設置・運営も対象 |
まず検討すべきは「人材育成支援コース」です。対象となる研修の範囲が広く、新入社員研修から資格取得支援、非正規社員の育成まで幅広くカバーできます。
人材育成支援コースの助成内容
業務から切り離して行う10時間以上の研修(OFF-JT)が対象です。研修の目的や対象者によって、助成率が変わります。
| 訓練の種類 | 経費助成率(中小企業) |
|---|---|
| 一般的な職務関連の訓練 | 45% |
| 非正規雇用の従業員向けの訓練 | 70% |
| 有期実習型訓練(正社員転換が目的) | 75%(賃金要件等を満たす場合は100%) |
経費助成に加えて、訓練を受けている時間分の賃金についても、時間単位で助成が受けられます。賃金要件などを満たす場合は、中小企業で1時間あたり200円が上乗せされます。
非正規雇用の従業員を対象にした訓練は助成率が高く、さらに有期実習型訓練を修了した方はキャリアアップ助成金の重点支援対象者に該当します。研修と正社員化をセットで計画すると、2つの制度を組み合わせられます。
令和8年度の主な改正点
- 令和8年4月8日に「中高年齢者実習型訓練」(45歳以上が対象)が新設された
- 同日、eラーニングの経費助成の上限額が引き下げられた
- 令和8年5月14日から、支給申請時に「受講料等の価格設定に関する疎明書」の提出が必要になった
- 令和8年8月3日から、不正受給時の企業名公表ルールが厳しくなった
助成率の高いコースを使うなら年度内に
事業展開等リスキリング支援コース
新規事業への進出、業態転換、DX・GXの推進などに向けて、従業員に新たなスキルを習得させる訓練が対象です。中小企業の経費助成率は最大75%、賃金助成は1時間あたり1,000円で、1事業所あたり年間1億円が上限という手厚い設計になっています。
たとえば100万円の研修を実施した場合、経費助成だけで75万円。実質的な負担は25万円まで下がります。
人への投資促進コース
デジタル分野の人材育成や、サブスクリプション型の定額制研修サービスの利用が対象です。定額制訓練は60%、高度デジタル人材の育成は75%の経費助成が受けられます。
この2コースは令和8年度末で終了する予定の時限措置です。訓練開始の1カ月前までに計画届を提出する必要があるため、年度内の活用を考えるなら逆算したスケジュール設計が必要です。
取り組みやすい「教育訓練休暇等付与コース」
従業員が自発的に学び直しをするための有給の教育訓練休暇制度を導入し、実際に運用した会社に、定額30万円(賃金要件等を満たす場合は36万円)が支給されます。
他のコースと違い、訓練の内容や時間数を細かく設計する必要がありません。就業規則に制度を規定し、実際に取得実績を作ることが主な要件です。研修の企画に手が回らない会社でも取り組みやすいコースといえます。
申請から受給までの流れ
職業能力開発推進者を選任する
人事担当者などを選び、社内の人材育成を推進する体制を整えます。
事業内職業能力開発計画を作成し、社内に周知する
書面での記録が必要です。訓練を始める前に完了させます。
訓練実施計画届を提出する
訓練開始日の6カ月前から1カ月前までの間に、労働局へ提出します。1カ月前を過ぎると受理されません。
計画どおりに訓練を実施する
受講記録、出勤簿、賃金台帳などを整えておきます。
支給申請する
訓練終了後、定められた期間内に申請します。
審査を経て支給決定・入金
内容が確認され、助成額が確定します。
計画届の提出期限が最大のポイントです。訓練開始の1カ月前までに提出しなければ、どれだけ内容が良い研修でも対象になりません。研修日程を決める前に、計画届の提出時期から逆算してください。
対象にならない研修
- 職務に関連しない研修や、趣味・教養に関する内容
- 通常の業務の中で行うOJTのみの育成(一部コースを除く)
- 10時間に満たない短時間の研修(人材育成支援コースの場合)
- 計画届を提出する前に開始した訓練
- 受講料が無料の講座や、実際に費用を支払っていないもの
なお、「この講座を受ければ必ず助成金が出る」といった案内には注意が必要です。業種、受講者の職務との関連性、実際の訓練内容、費用や賃金の支払い状況など、個別に審査されたうえで可否が判断されます。
制度を使いこなすための準備
人材開発支援助成金は、コースが多く要件も細かいため、「自社の研修計画がどのコースに当てはまるか」の見極めが最初のハードルになります。そのうえで、訓練の記録、受講者の出勤簿、賃金台帳といった書類を正確にそろえる必要があります。
「リブオフィスクラウド」は、勤怠・給与・労務の記録をクラウドで管理できるツールです。導入コストは0円で、申請に必要な帳票をその場で出力できます。どのコースが使えるか、計画届の提出時期をいつに設定すべきかについては、専門スタッフがサポートします。
よくある質問
外部のセミナーや資格講座も対象になりますか。
職務に関連する内容で、要件を満たす訓練であれば対象になり得ます。受講時間や実施方法に条件があるため、申し込みの前にご確認ください。
eラーニングでも助成を受けられますか。
受けられますが、経費助成の上限額が別に設定されており、賃金助成の対象にはなりません。令和8年4月8日からは上限額が引き下げられています。
研修が終わってから申請できますか。
できません。訓練開始の1カ月前までに計画届を提出していることが前提です。事後の申請は認められていません。
キャリアアップ助成金と併用できますか。
できます。有期実習型訓練を修了した従業員はキャリアアップ助成金の重点支援対象者に該当するため、研修後に正社員化すれば両方を活用できます。
パートやアルバイトも対象になりますか。
対象になります。非正規雇用の従業員向けの訓練は経費助成率が高く設定されており、人材の定着にもつながります。
建設業ですが、技能講習の費用も対象ですか。
建設労働者技能実習コースが用意されています。足場の組立てや玉掛けなどの技能講習が対象で、建設業には有利な制度です。詳しくは建設業の助成金ガイドもご覧ください。
まとめ
人材開発支援助成金は、研修費用の45%から75%と、訓練中の賃金の一部が助成される制度です。人材育成支援コースは汎用性が高く、教育訓練休暇等付与コースは定額30万円で取り組みやすい設計になっています。
一方で、助成率の高いリスキリング関連の2コースは令和8年度末で終了する予定です。計画届は訓練開始の1カ月前までという期限もあるため、活用を考えているなら早めの準備が必要です。自社の研修計画がどのコースに当てはまるか分からない場合は、無料診断からご相談ください。
※本ページは令和8年度(2026年度)時点の公表情報をもとに作成した一般的な解説です。コース構成・助成率・限度額・時限措置の取り扱いは変更される場合があります。申請にあたっては、厚生労働省「人材開発支援助成金」の最新パンフレットおよび管轄労働局の案内を必ずご確認ください。