2026年度(令和8年度)に中小企業が使える主な助成金は、正社員化のキャリアアップ助成金(1人最大80万円)、賃上げと設備投資の業務改善助成金(上限600万円)、研修の人材開発支援助成金(経費の45〜75%)の3つが中心です。このほか、育児・介護との両立、人材の定着、高年齢者の雇用、労働時間の短縮などに対応する制度があります。いずれも雇用保険の適用事業所であることが前提で、多くは取り組みを始める前の手続きが必要です。
この記事の要点
- 助成金は要件を満たせば原則受給でき、補助金は審査で採択された事業者のみが受け取れる
- まず検討すべき3制度:キャリアアップ助成金、業務改善助成金、人材開発支援助成金
- 金額が大きいのは業務改善助成金(上限600万円)とデジタル化・AI導入補助金(上限450万円)
- 共通の前提条件は、雇用保険の適用事業所であること、労働保険料を滞納していないこと
- ほぼすべての制度で、取り組みの前に計画書の提出や就業規則の整備が必要
- 会社都合の離職者を出していると、多くの制度が一定期間使えなくなる
目的から探す
助成金と補助金の違い
| 項目 | 助成金 | 補助金 |
|---|---|---|
| 主な所管 | 厚生労働省 | 経済産業省・中小企業庁・自治体 |
| 財源 | 雇用保険料 | 税金 |
| 受給の可否 | 要件を満たせば原則受給 | 審査で採択された事業者のみ |
| 募集 | 通年のものが多い | 公募期間あり |
| 対象 | 雇用・人材育成・労働環境 | 設備投資・IT導入・販路開拓 |
詳しくは助成金と補助金の違いで解説しています。従業員を雇用している会社は、採択の競争がない助成金から検討するのが現実的です。
正社員化・処遇改善に使う
キャリアアップ助成金
1人 40万〜80万円- 所管
- 厚生労働省
- 対象
- 非正規雇用の従業員を正社員に転換する、賃金規定を改定する、賞与・退職金制度を設ける、短時間労働者の労働時間を延長する など(6コース)
- 申請時期
- 通年
- ポイント
- 勤続3年以上などの「重点支援対象者」なら中小企業で80万円。正社員転換制度の規定、多様な正社員制度の規定、情報公表の3つの加算で、事業所単位で最大80万円の上乗せも
賃上げ・生産性向上に使う
業務改善助成金
上限 600万円- 所管
- 厚生労働省
- 対象
- 事業場内の最低賃金を50円以上引き上げ、あわせて生産性向上のための設備投資を行った中小企業
- 助成率
- 設備費用の4分の3または5分の4
- 申請時期
- 期間限定(2026年度は9月1日受付開始、締切は地域別最低賃金の発効日前日または11月30日の早い方)
- ポイント
- コースは50円・70円・90円の3つ。事業場ごとに申請し、同一事業主の年間上限は600万円
業務改善助成金は申請期間が短い制度です。賃上げは交付申請の後、設備の購入は交付決定の後に行う必要があります。順番を誤ると対象外になります。
研修・人材育成に使う
人材開発支援助成金
経費の45〜75%- 所管
- 厚生労働省
- 対象
- 従業員に職務に関連する研修や職業訓練を実施した事業主(7コース)
- 申請時期
- 通年(訓練開始の1カ月前までに計画届の提出が必要)
- ポイント
- 有給の教育訓練休暇制度を導入すれば定額30万円。建設業には認定訓練・技能実習の専用コースあり。リスキリング関連の2コースは令和8年度末までの時限措置
定着・働き方の改善に使う
| 制度名 | 対象となる取り組み | 備考 |
|---|---|---|
| 人材確保等支援助成金 | 評価・処遇制度、研修制度、健康づくり、メンター制度などの雇用管理制度を導入し、離職率の低下を目指す | 建設業向けのコース、テレワーク向けのコースなどもあり |
| 両立支援等助成金 | 育児休業・介護休業の取得促進、柔軟な働き方の制度整備 | 男性の育児休業取得を支援するコースもあり |
| 働き方改革推進支援助成金 | 労働時間の短縮、勤務間インターバルの導入、年次有給休暇の取得促進 | 取り組みに要した費用の一部を助成 |
| 65歳超雇用推進助成金 | 定年の引き上げ、継続雇用制度の導入、高年齢者の雇用環境の整備 | ベテラン人材の活用に |
離職率を下げる施策と制度の対応は離職率を下げる施策と公的制度で詳しく解説しています。
採用に使う
| 制度名 | 対象となる取り組み |
|---|---|
| トライアル雇用助成金 | 職業経験の不足などにより就職が困難な方を、試行的に雇用する |
| 特定求職者雇用開発助成金 | 高年齢者、障害のある方、母子家庭の母などをハローワーク等の紹介で継続雇用する |
| 雇用調整助成金 | 業績の悪化時に、解雇せず休業・教育訓練・出向で雇用を維持する |
採用コストの実態と、採用より登用が有利になる理由は採用コストの計算方法をご覧ください。
設備投資・IT導入に使う(補助金)
| 制度名 | 対象 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金 (旧IT導入補助金) | 会計・勤怠・受発注などの業務システム、POSレジ、AI機能付きツールの導入 | 上限450万円 |
| 中小企業省力化投資補助金 | 人手不足解消のための機械・ロボットの導入 | 制度・類型により異なる |
| 小規模事業者持続化補助金 | 販路開拓のための広告、ウェブサイト制作、店舗改装 | 制度により異なる |
| ものづくり・新事業進出関連の補助金 | 新製品開発、生産プロセス改善、新分野展開の設備投資 | 数百万〜数千万円 |
業種から探す
| 業種 | 特に相性の良い制度 |
|---|---|
| 建設業 | キャリアアップ助成金(職人の正社員化)、人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース:玉掛け・足場などの技能講習)、人材確保等支援助成金(建設キャリアアップシステム等活用促進コース) |
| 飲食業 | 業務改善助成金(賃上げ+食洗機・POSレジ)、キャリアアップ助成金(アルバイトの正社員化) |
| 介護・福祉 | 人材開発支援助成金(資格取得支援)、人材確保等支援助成金(離職率の低下)、両立支援等助成金 |
| 美容・サロン | キャリアアップ助成金(アシスタントの正社員化)、人材開発支援助成金(技術研修) |
| 小売・サービス | 業務改善助成金(賃上げ+セルフレジ)、キャリアアップ助成金(パートの正社員化) |
すべての助成金に共通する前提条件
- 雇用保険の適用事業所であること(従業員を雇用していることが前提)
- 労働保険料を滞納していないこと
- 就業規則や賃金規定が整備され、実態と一致していること
- 出勤簿・賃金台帳などの記録が正確に残っていること
- 一定期間内に会社都合の離職者を出していないこと
- 過去に不正受給をしていないこと
最も多い失敗は、取り組みを先に始めてしまうことです。正社員化、賃上げ、研修、設備導入。いずれも、計画書の提出や就業規則の改定、交付決定を受ける前に実施すると対象外になります。「やってから申請」はできません。
自社に合う制度の選び方
-
今後1年の予定を書き出す
正社員化、賃上げ、採用、研修、設備の入れ替え。予定している取り組みを挙げます。助成金は「これからやること」に対して支給される制度です。
-
前提条件を満たしているか確認する
雇用保険への加入、労働保険料の納付状況、就業規則の有無、会社都合の離職者の有無を確認します。ここでつまずく会社が最も多い部分です。
-
着手前に手続きを済ませる
計画書の提出、就業規則の改定、交付申請。制度ごとに必要な手続きを、取り組みを始める前に完了させます。
-
記録を整えながら実施する
勤怠・賃金の記録は、そのまま申請書類の根拠になります。取り組み期間中の記録が正確でないと、要件を満たしていても受給できません。
受給までの期間や各段階の詳細は受給までの流れ・スケジュール、自社で申請する場合の進め方は自社申請と社労士依頼の比較で解説しています。
助成金の申請でつまずく原因の多くは、制度の難しさではなく書類の整合性です。勤怠と賃金の記録が整っていれば、自社での申請は十分に可能です。「リブオフィスクラウド」は、導入コスト0円で勤怠・給与・労務の記録を一元管理でき、申請に必要な帳票をその場で出力できます。
よくある質問
2026年度に中小企業が使える助成金にはどのようなものがありますか。
中心となるのは、正社員化や処遇改善のキャリアアップ助成金(1人最大80万円)、賃上げと設備投資の業務改善助成金(上限600万円)、研修の人材開発支援助成金(経費の45〜75%)の3つです。このほか、両立支援等助成金、人材確保等支援助成金、働き方改革推進支援助成金、トライアル雇用助成金などがあります。
最も金額が大きい助成金はどれですか。
雇用関係では業務改善助成金で、上限600万円です。ただしこの金額は、特例事業者が90円コースで10人以上の賃上げを行う場合に適用されるものです。設備投資では、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)が上限450万円となっています。
助成金を受けるための共通の条件は何ですか。
雇用保険の適用事業所であること、労働保険料を滞納していないこと、就業規則や勤怠・賃金の記録が整備されていること、一定期間内に会社都合の離職者を出していないことなどが共通の前提です。
従業員が数名でも助成金は使えますか。
使えます。雇用保険に加入している従業員がいれば対象になり、規模の小さい事業場ほど上限額が手厚く設定されている制度もあります。従業員を雇用していない個人事業主は、雇用関係の助成金の対象外です。
すでに正社員化や設備導入を済ませていますが申請できますか。
多くの制度で対象外となります。助成金は「これから行う取り組み」を支援する制度で、計画書の提出や就業規則の整備、交付決定を先に済ませる必要があるためです。今後の取り組みについては対象になる可能性があります。
助成金と補助金は併用できますか。
制度が異なれば併用できる場合があります。ただし、同じ取り組みや同じ経費に対して重複して受給することはできません。組み合わせを検討する際は事前の確認が必要です。
まとめ
2026年度に中小企業が使える助成金は、目的別に整理すると選びやすくなります。正社員化ならキャリアアップ助成金、賃上げと設備投資なら業務改善助成金、研修なら人材開発支援助成金。この3つを押さえたうえで、定着、採用、両立支援などの制度を組み合わせるのが基本です。
共通するのは、雇用保険への加入と記録の整備という前提条件、そして取り組みの前に手続きを済ませることです。今後1年の予定を書き出し、着手する前に対象となる制度を確認しておけば、受け取れるはずの資金を逃さずに済みます。
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※本記事は令和8年度(2026年度)時点の公表情報をもとに作成した一般的な解説です。支給額・要件・申請期限は年度ごとに見直され、変更される場合があります。申請にあたっては、厚生労働省・経済産業省および各自治体の最新の公式情報を必ずご確認ください。当社は助成金の申請代行を行っておりません。
