赤字でも受け取れるお金がある|業績と無関係な支援制度と注意点

赤字の会社でも受け取れるお金はあります。厚生労働省の雇用関係の助成金は、業績ではなく「取り組みの内容」で支給が判断されるため、赤字であっても要件を満たせば受給できます。さらに、業績の悪化そのものが支給要件になる雇用調整助成金や、利益率の低下で上限額が引き上げられる業務改善助成金の特例、前期に納めた法人税が戻る欠損金の繰戻し還付など、赤字の会社だからこそ使える制度もあります。

この記事の要点

  • 雇用関係の助成金は、業績ではなく取り組みの内容で判断される。赤字でも要件を満たせば受給できる
  • キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金、両立支援等助成金などは業績要件がない
  • 雇用調整助成金は、売上高などの減少が支給要件のひとつ。業績悪化時に雇用を守るための制度
  • 業務改善助成金では、利益率が低下した事業者は「特例事業者」として上限額の区分が広がる
  • 中小法人が赤字になった場合、前期に納めた法人税の還付を受けられる「欠損金の繰戻し還付」がある
  • ただし、労働保険料や税金の滞納、会社都合の離職者がいる場合などは、赤字かどうかにかかわらず対象外になる
目次

なぜ助成金は業績を問わないのか

銀行融資の審査では、返済能力が重視されます。赤字が続いていれば融資は受けにくくなり、受けられたとしても条件が厳しくなりがちです。

一方、厚生労働省の雇用関係の助成金は、雇用の安定や労働者の処遇改善を目的とした制度です。財源は事業主が納める雇用保険料であり、支給の判断基準は「正社員化をしたか」「賃金を引き上げたか」「研修を実施したか」といった取り組みの内容です。会社が黒字か赤字かは、原則として問われません。

むしろ、業績が苦しい時期に人材への投資を続けることは、景気回復時の競争力を左右します。助成金は、そうした投資の負担を軽くするために使える制度です。

業績に関係なく使える制度

要件を満たせば、黒字・赤字を問わず受給できます

キャリアアップ助成金

正社員化処遇改善パート・契約社員を正社員に転換した場合、中小企業で1人あたり40万〜80万円。非正規雇用の従業員の賃金規定の改定や、賞与・退職金制度の導入も対象です。

人材開発支援助成金

研修人材育成従業員に職務に関連する研修を実施した場合、研修費用の45〜75%と、訓練中の賃金の一部が助成されます。

両立支援等助成金

育児介護育児休業や介護休業、柔軟な働き方の制度を整備し、従業員が利用した場合などに支給されます。

トライアル雇用助成金・特定求職者雇用開発助成金

採用就職が困難な方を試行的に、または継続的に雇い入れた場合に支給されます。

業績の悪化がむしろ要件・有利になる制度

赤字や減収の会社だからこそ使える、または条件が良くなる制度です

雇用調整助成金

雇用維持経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員を解雇せずに休業や教育訓練、出向によって雇用を維持した場合に、休業手当などの一部が助成されます。

売上高や生産量などの指標が一定以上減少していることが支給要件のひとつであり、業績が悪化した会社のための制度です。

業務改善助成金(特例事業者)

賃上げ設備投資賃上げとあわせて設備投資を行った場合に、設備費用の最大5分の4を助成する制度です。原材料費の高騰などで直近の利益率が前年同期比で一定以上低下している事業者は「特例事業者」に該当し、10人以上の引き上げ区分が追加されるなど、上限額の枠が広がります。

業績が厳しいからこそ、生産性向上の投資を後押しする設計になっています。

欠損金の繰戻し還付(税制)

法人税青色申告をしている中小法人などが赤字(欠損金)になった場合、前期(1年以内)に納めた法人税の還付を請求できる制度です。前期が黒字で法人税を納めていれば、今期の赤字分に対応する法人税が戻ってくる可能性があります。

また、還付を請求しない場合でも、赤字は翌期以降に繰り越して、将来の黒字と相殺できます(欠損金の繰越控除)。適用には要件があるため、顧問税理士にご確認ください。

赤字でも申請できないケース

助成金は業績を問わない一方で、次のような場合は赤字か黒字かにかかわらず対象外になります。

  • 労働保険料を滞納している。雇用関係の助成金では、労働保険料の納付が前提です
  • 会社都合で従業員を離職させた。制度ごとに定められた期間内に会社都合の離職者(解雇や退職勧奨など)がいると、対象外になる制度が多くあります
  • 過去に不正受給をした。一定期間は助成金の申請ができません
  • 労働関係法令の違反がある。一定の法令違反により送検されている場合などは対象外です
  • 取り組みを先に実施してしまった。計画書の提出前や交付決定前の取り組みは、対象になりません

業績悪化時の人員削減には注意が必要です。赤字を理由に従業員を解雇したり退職を勧めたりすると、その後一定期間、多くの助成金が使えなくなります。雇用を維持しながら乗り切る手段として、まず雇用調整助成金などを検討する価値があります。

補助金は赤字でも申請できるのか

経済産業省系の補助金も、赤字であること自体を理由に申請できないものは多くありません。ただし、補助金は審査で採択される必要があり、事業計画の実現可能性が評価されます。財務状況や、補助事業後に付加価値額や賃金を引き上げる計画の妥当性が見られるため、赤字の会社は計画の説得力がより問われます。

また、補助金も助成金も原則として後払いです。先に費用を支払う必要があるため、手元資金が乏しい状態では、そもそも取り組みを実行できないこともあります。

制度の種類赤字の影響
雇用関係の助成金原則として影響しない。要件を満たせば受給できる
雇用調整助成金業績の悪化が支給要件のひとつ
業務改善助成金利益率が低下していれば特例事業者として有利になる
補助金申請は可能なものが多いが、審査で事業計画の実現性が問われる
融資審査に影響しやすい

赤字の会社が助成金を活用するときのポイント

「いずれやること」を助成金の対象にする

赤字の時期に新しい取り組みを始めるのは難しいものです。しかし、最低賃金の引き上げへの対応、長く働くパートの処遇改善、必要な資格の取得支援など、いずれ避けられない取り組みは多くあります。これらを、着手前の手続きを済ませたうえで実施すれば、助成金の対象になり得ます。

後払いであることを前提に資金計画を立てる

助成金は取り組みの後に支給されるため、その間の費用は手元資金や融資でまかなう必要があります。融資との組み合わせ方は融資と助成金はどちらを先に検討すべきかで解説しています。

記録を整えておく

助成金の申請では、出勤簿、賃金台帳、就業規則などの提出が求められます。業績が苦しい時期は管理部門の余力も限られるため、日々の記録が自動で整う仕組みをつくっておくと、申請の負担を大きく減らせます。

  • 雇用保険の適用事業所であり、労働保険料を滞納していない
  • 会社都合の離職者を出していない
  • 就業規則が整備され、実態と一致している
  • 出勤簿・賃金台帳などの記録が正確に残っている
  • 取り組みを始める前に、必要な手続きを確認できる

「リブオフィスクラウド」は、勤怠・給与・労務の記録をクラウドで一元管理するツールです。導入コストは0円のため、資金に余裕がない時期でも検討しやすい仕組みです。助成金の申請に必要な帳票をその場で出力でき、どの制度が使えるかは専門スタッフがサポートします。

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よくある質問

赤字の会社でも助成金は受けられますか。

受けられます。厚生労働省の雇用関係の助成金は、業績ではなく取り組みの内容で支給が判断されるため、赤字であっても要件を満たせば受給できます。ただし、労働保険料の滞納がある場合や、会社都合の離職者がいる場合などは対象外になります。

業績が悪い会社のための助成金はありますか。

あります。雇用調整助成金は、売上高などの減少を要件のひとつとして、従業員を解雇せずに休業などで雇用を維持した場合に休業手当などの一部を助成する制度です。また業務改善助成金では、利益率が低下した事業者は特例事業者として上限額の枠が広がります。

赤字のときに法人税が戻ってくる制度はありますか。

青色申告をしている中小法人などが赤字になった場合、前期に納めた法人税の還付を請求できる「欠損金の繰戻し還付」があります。適用には要件があるため、顧問税理士にご確認ください。

赤字で従業員を解雇した場合、助成金は使えますか。

多くの助成金では、一定期間内に会社都合の離職者がいると対象外になります。業績悪化時に人員を削減すると、その後の助成金の活用が難しくなる点に注意が必要です。

補助金は赤字でも申請できますか。

申請できるものが多くあります。ただし補助金は審査で採択される必要があり、事業計画の実現可能性が評価されます。赤字の会社は、補助事業によって収益がどう改善するかを具体的に示すことが求められます。

債務超過でも助成金は受けられますか。

雇用関係の助成金は、原則として財務状況を支給要件としていません。ただし、労働保険料の滞納がないこと、取り組みを実施できることなどが前提となります。事業の継続に関わる判断は、顧問税理士などの専門家にもご相談ください。

まとめ

赤字であっても、受け取れるお金はあります。雇用関係の助成金は業績ではなく取り組みの内容で判断されるため、要件を満たせば受給できます。さらに、雇用調整助成金や業務改善助成金の特例、欠損金の繰戻し還付のように、業績が悪化した会社だからこそ使える制度もあります。

ただし、労働保険料の滞納や会社都合の離職者がいると、赤字かどうかにかかわらず対象外になります。苦しい時期こそ、人員削減より先に使える制度を確認することが、雇用と事業の両方を守る選択になります。

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※本記事は一般的な制度の考え方を解説したものです。各制度の要件・金額は変更される場合があります。雇用調整助成金は経済情勢に応じて要件や特例が見直されることがあるため、最新情報を厚生労働省の公式情報でご確認ください。税務に関する個別の判断は税理士にご相談ください。

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