離職率を下げるには、辞める理由を数字と声で把握し、原因に合った施策を打つことが基本です。主な施策は、賃金・処遇の改善、労働時間の適正化、評価制度の整備、教育とキャリアの見通し、人間関係のケア、柔軟な働き方、入社前後のギャップの解消の7つです。これらの多くには、キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金、人材確保等支援助成金、両立支援等助成金など、国の支援制度が用意されています。
この記事の要点
- 離職率 = 一定期間の離職者数 ÷ 期首の在籍者数 × 100
- 厚生労働省の令和6年雇用動向調査では、全国の離職率は14.2%(前年から1.2ポイント低下)
- 1人の早期離職で、採用費・給与・教育の時間を含めて100万円を超える損失が生じることがある
- 離職の理由は「労働条件」「人間関係」「収入」「将来の見通し」に集約されることが多い
- 賃上げ、正社員化、研修、評価制度、両立支援など、定着施策の多くは助成金の対象になる
- 助成金の多くは取り組みの前に手続きが必要。施策を始める前に確認することが重要
離職率とは何か
離職率とは、一定期間内に在籍していた従業員のうち、どれだけの割合が辞めたかを示す指標です。
離職率(%)= 期間中の離職者数 ÷ 期首の在籍者数 × 100
例:1月1日時点の従業員30名のうち、年間で5名が退職 → 離職率 約16.7%計算方法に厳密な決まりはありませんが、自社で推移を追う際は、期間と計算方法を統一しておくことが大切です。全体の離職率だけでなく、「入社1年以内」「部署別」「雇用形態別」に分けて見ると、問題の所在が分かりやすくなります。
全国の離職率はどのくらいか
厚生労働省が2025年8月に公表した令和6年「雇用動向調査」では、全国の離職率は14.2%で、前年から1.2ポイント低下しました。入職率は14.8%で、入職者が離職者を上回る状態が4年連続で続いています。
| 項目(令和6年) | 数値 |
|---|---|
| 離職率 | 14.2%(前年比 −1.2ポイント) |
| 入職率 | 14.8%(前年比 −1.6ポイント) |
| 入職超過率 | 0.6ポイント |
ただし、離職率は業種によって大きく異なり、宿泊業・飲食サービス業などでは全体平均を大きく上回る傾向があります。自社の数字は、同業種の水準とあわせて評価することが重要です。
離職は、どのくらいの損失になるのか
従業員が1人辞めると、次のようなコストが発生します。
- 後任を採用するための求人広告費や人材紹介手数料
- 面接・選考に使う経営者や社員の時間
- 新しく入った人の研修と、戦力化までの期間
- 欠員を埋めるための残業代や、残った従業員の負担増
- 取引先や顧客との関係、社内のノウハウの喪失
採用単価70万円、月給25万円の人が入社3カ月で辞めた場合、およそ170万円規模の損失になるという試算もあります。詳しくは採用コストの計算方法で解説しています。離職率を下げることは、採用コストを下げる最も確実な方法でもあります。
離職は連鎖します。1人が辞めると残った従業員の負担が増え、その負担がさらに次の離職を招く。小規模な職場ほど、この悪循環が起きやすくなります。
従業員はなぜ辞めるのか
雇用動向調査などの公的な調査では、個人的な理由による離職のきっかけとして、次のような項目が上位に挙がる傾向があります。
| 離職の理由の分類 | 具体例 |
|---|---|
| 労働条件 | 労働時間が長い、休日が少ない、シフトの融通がきかない |
| 収入 | 給与が低い、昇給が見込めない、仕事量に見合わない |
| 人間関係 | 上司や同僚との関係、相談できる相手がいない |
| 将来の見通し | 評価の基準が分からない、スキルが身につかない、キャリアが描けない |
| ライフイベント | 結婚、出産、育児、介護との両立が難しい |
| 入社前とのギャップ | 聞いていた仕事内容や条件と違う |
退職者が本当の理由を口にすることは多くありません。「一身上の都合」の裏に何があるのかを把握するには、日頃の面談や、退職時のていねいな聞き取りが欠かせません。
離職率を下げる7つの施策と、使える公的制度
賃金・処遇を改善する
収入への不満は、離職理由として常に上位に挙がります。基本給の引き上げだけでなく、昇給の仕組みを明確にする、賞与や退職金の制度を整えるといった取り組みも有効です。
非正規雇用の従業員を正社員に登用する
長く働いているパートや契約社員を正社員にすれば、安心して働き続けられる環境が整います。外部から採用するより、採用・教育のコストも小さく済みます。
労働時間を適正にする
長時間労働や休みの取りにくさは、心身の負担として離職に直結します。まず勤怠を正確に記録し、残業が誰に、いつ、なぜ偏っているかを把握することが出発点です。
- 残業の発生源の特定と業務の再配分
- 有給休暇を取得しやすい仕組みづくり
- 勤務間インターバル(終業から次の始業までの休息時間)の確保
評価制度と賃金体系を整える
「何をすれば評価され、給与が上がるのか」が分からない職場では、将来への不安から離職が起きやすくなります。評価の基準と、それに連動した賃金体系を明文化することで、従業員は目標を持って働けます。
教育とキャリアの見通しを示す
スキルが身につき、成長できる実感は、定着の大きな要因です。入社後の研修、資格取得の支援、将来のキャリアパスの提示が効果的です。
人間関係をケアする仕組みをつくる
人間関係の問題は、個人の相性だけでなく、相談できる仕組みの有無に左右されます。
- 上司と部下の定期的な面談(1on1)
- 新入社員に先輩社員をつけるメンター制度
- ハラスメントの相談窓口の設置
ライフイベントと両立できる働き方を用意する
出産、育児、介護をきっかけとした離職は、本人も会社も望んでいないケースが多くあります。育児・介護休業の取得促進、短時間勤務、柔軟なシフトなどで、働き続けられる選択肢を用意します。
もう一つ見落とされがちなのが、入社前後のギャップの解消です。求人票や面接で仕事内容や労働条件を正直に伝えることで、入社後の「こんなはずではなかった」による早期離職を防げます。
離職対策を進める4つのステップ
-
離職の実態を数字で把握する
過去3年分の離職者を、入社時期、在籍期間、部署、雇用形態、年齢などで整理します。「入社1年以内の離職が多い」「特定の部署に集中している」など、傾向が見えてきます。
-
辞める理由と、残っている理由を聞く
退職者への聞き取りに加え、在籍している従業員への面談やアンケートも有効です。辞める理由だけでなく「なぜ続けているのか」を知ることで、強みを伸ばす施策も見えてきます。
-
使える支援制度を確認する
施策が決まったら、実行の前に助成金の対象になるかを確認します。多くの制度で、計画書の提出や就業規則の整備が取り組みの前に必要です。
-
施策を実行し、効果を測る
施策の実施後も、離職率の推移を追い、効果を検証します。効果が出ない場合は、原因の見立てを見直します。
3番目のステップを飛ばさないでください。賃上げや正社員化、研修、制度の導入を先に始めてしまうと、本来受けられたはずの助成金の対象外になることがあります。離職対策は、公的支援を最も活用しやすい分野のひとつです。
記録の整備が、施策と申請の土台になる
離職率の分析にも、助成金の申請にも、正確な記録が欠かせません。入退社の履歴、勤怠、賃金、休暇の取得状況。これらが一元管理されていれば、離職の傾向を分析しやすくなり、助成金の申請書類もすぐにそろえられます。
「リブオフィスクラウド」は、勤怠・給与・労務の管理をクラウドで一元化するツールです。導入コストは0円で、残業の偏りや休暇の取得状況も把握しやすくなります。どの助成金が使えるかは、専門スタッフがサポートします。
よくある質問
離職率はどのように計算しますか。
一般的には「期間中の離職者数÷期首の在籍者数×100」で計算します。たとえば1月1日時点の従業員30名のうち年間で5名が退職した場合、離職率は約16.7%です。自社で推移を追う際は、期間と計算方法を統一してください。
日本の平均的な離職率はどのくらいですか。
厚生労働省の令和6年雇用動向調査では、全国の離職率は14.2%で、前年から1.2ポイント低下しました。ただし業種によって大きく異なるため、同業種の水準と比較することが重要です。
離職率を下げるために最初にすべきことは何ですか。
離職の実態を把握することです。過去の離職者を入社時期、在籍期間、部署、雇用形態などで整理し、どこに問題が集中しているかを確認します。あわせて、退職者や在籍者から理由を聞き取ることで、原因に合った施策を選べます。
離職率を下げる取り組みに助成金は使えますか。
使えます。賃金の改善や正社員化にはキャリアアップ助成金、研修には人材開発支援助成金、評価制度などの雇用管理制度の導入には人材確保等支援助成金、育児・介護との両立には両立支援等助成金があります。多くは取り組みの前に手続きが必要です。
小さな会社でもできる離職対策はありますか。
あります。定期的な面談の実施、評価基準の明文化、求人時の正直な情報提供などは、費用をかけずに始められます。長く働いているパートの正社員化は、助成金を活用しながら取り組める有効な施策です。
給与を上げれば離職は減りますか。
収入は重要な要因ですが、それだけでは解決しないことも多くあります。労働時間、人間関係、評価の納得感、将来の見通しなど、辞める理由は複数重なっていることが一般的です。実態を把握したうえで、施策を組み合わせることが効果的です。
まとめ
離職率を下げるには、まず自社の離職の実態を数字と声で把握し、原因に合った施策を選ぶことが基本です。賃金・処遇、労働時間、評価制度、教育、人間関係、両立支援、入社前後のギャップ。いずれも定着に効く施策であり、その多くに国の支援制度が用意されています。
離職対策は、公的支援を最も活用しやすい分野のひとつです。施策を始める前に、使える制度があるかを確認しておきましょう。自社で対象となる制度は、無料診断でご確認いただけます。
※本記事の統計データは公表時点のものです。各助成金の要件・金額は年度ごとに見直されるため、最新情報は厚生労働省の公式情報でご確認ください。人事制度の設計など個別の判断は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
